ウサギさんの避妊手術(ハムスターさんも!)

すっかりご無沙汰してしまいました。
最近はもうすっかり秋の空気になりましたね。
病院の花壇では、スタッフが植えてくれた百日草がきれいに咲いています。

病院の花壇の百日草

さて、皆さんは「避妊手術」というとどんなものを想像されるでしょうか?
避妊手術の方法はいくつかありますが、最も多く実施されているのはお腹を開けて子宮と卵巣を取り除く手術です。
男の子が睾丸を取り除く手術のことは、去勢手術と呼びます。

さて、なぜ避妊手術をするのでしょう?

ワンちゃんや猫ちゃんでは一般的になりつつあるので、ご存じの方も多いかもしれませんね。
一番のメリットはやはり病気の予防につながる、ということです。
将来的にかかるかもしれない卵巣や子宮の病気を予防することができます。
具体的には、卵巣腫瘍、子宮がん、子宮蓄膿症などは臓器そのものを取り除くのでかかる心配がなくなります。

実はウサギさんにも避妊手術のメリットがあります

実はこのメリットは、ワンちゃんや猫ちゃんだけでなく、ウサギさんにも言えることなのです。
これまで、ウサギさんの診療が可能な病院が少ないためにあまり知られていませんでしたが、避妊手術をしていないウサギさんは高確率で生殖器(卵巣・子宮)の病気にかかります
6~7歳と高齢になってから発症することが多いですが、3~4歳の若い子でも見られます。

ウサギさんは自分の体調不良を隠すのがとても上手な生き物です。
野生では体調が悪いことがバレると食べられてしまう過酷な環境ですから、本当はつらいのに普段通りふるまうことが多いのです。


生殖器疾患の症状として見られるものは

  • 元気と食欲がない
  • 血尿
  • お腹がふくらんでいる
  • 呼吸困難(特に進行している場合)

といったものが挙げられます。

ウサギさんではこれらの症状のすべてが同時に見られることはほとんどありません。
どれか一つでも気になる症状が見られたら、すぐ病院へ連れていくことをおすすめします。
血尿は、必ずしも赤くてわかりやすい尿が出るわけではなく、血の塊が混じる、うっすら赤い、血尿と普通の尿を繰り返すなど、様々です。
ウサギさんは健康でも赤いおしっこをすることがあるので、判断に迷ったら病院に行って検査してもらいましょう。

症例紹介ー当院に来院されたウサギさんの一例ー

今回は、実際にウサギさんの不調で来院され、手術をした子の症例紹介をさせて頂きます。

【飼い主さん】Aさん(仮名)
【ウサギさん】そらちゃん(仮名)

そらちゃんは7歳のロップイヤーの女の子です。
おなかがぽっこり膨らんでいる、という理由で来院されました。
そらちゃんのおなかを超音波検査したところ、子宮の壁が分厚くなり、液体がたまっていると思われる大きなかたまりが見つかりました。
その超音波で見る限り、その大きさは約10cm!
体重2.35kgしかないそらちゃんのおなかの中に、とんでもないものが隠れているようです。

そらちゃんはその後、血液検査とX線検査をして麻酔のリスクを確認しました。
そらちゃんのX線写真がこちらです。

どこからどこまでが病変かというと…

お腹の中に大きな病変を持ったウサギのレントゲン写真

おなかの中にびっくりするほど大きなかたまりが入っていることがわかります。

検査の結果を見てリスクを確認したうえで、そらちゃんにはワンちゃん猫ちゃんと同じように点滴をつけ、全身麻酔下でお腹を開けてかたまりを取り出す手術をしました。
おなかを開けて見たところ、右側の卵巣と子宮に膿がたまっていました。
子宮とは別に大きなかたまりもあり、慎重に取り出しました。
ずっと体の中にあった大きなものを取り出すと、たとえそれが悪いものでも一時的に血圧が下がってしまう可能性があるからです。
手術が済み、麻酔を切ると、ほどなくしてそらちゃんは覚醒しました。
改めてそらちゃんの体重をはかると1.92kgでした。
とりだした子宮とかたまりを合わせて約400gです。
小さな体で本当によく頑張ってくれました。
翌朝から、Aさんに持ってきてもらった牧草とペレットをあげるとすぐに食べ始めました。
同日、そらちゃんは退院していきました。

そらちゃんから取り出した子宮とかたまりは、保存液に入れて検査会社に送ります。
この子宮やかたまりが一体何の病気なのかを調べてもらうためです。
検査結果はそらちゃんが退院して1週間ほどで出ました。
結果、子宮は腺癌という悪性腫瘍になってしまっていたこと、大きなかたまりは何が原因で発生したものかはわからないが、子宮同様、腺癌だったという事がわかりました。

1週間後、来院されたそらちゃんは元気あり、食欲ありとのことで、普段どおりに生活ができるようになっていました。
さらに3か月後、そらちゃんの体重は2.2kgになり、体の中にあったかたまりの分まで体重が増えていました。

そらちゃんは今回の手術で元気になってくれましたが、検査の結果悪性腫瘍だったことがわかっているので、今後は転移に注意しなければなりません。
Aさんには、今後のそらちゃんの定期的な検査をお願いしました。
具体的には3か月ごとのX線検査、超音波検査です。
そらちゃんには負担をお願いすることになりますが、もし早い段階で転移を見つけることができたら、今回のように負担の大きな手術はせずに済むかもしれません。
将来おこりうる大変な手術を防ぐために、定期的に検査をすることはとても大切です。

大病を防ぐためにー避妊手術という選択肢ー

でももう一つ、同じように将来起こりうる大変な病気を防ぐために元気な時に手術をしておくという選択肢もあります
今回、そらちゃんに実施した手術はお腹の中の子宮と巨大なかたまりを取り除くというものでした。
しかし若くて元気な時に小さな子宮と卵巣を取り除くだけならもっと負担は少なくて済みます。
ワンちゃん、猫ちゃんでは多くの方が知っている避妊手術ですが、ウサギさんを飼っている方で避妊手術をしないことのリスクをよく理解している方は少ないです。
ウサギさんは臆病で神経質な子が多いので、健康な時に病院に連れていくこと自体をかわいそうと感じる方も多いと思います。
ですが、防げるはずだった病気になって、具合の悪い状態で病院に行くのは本当に命にかかわります

どんなに若くて健康な子でも、全身麻酔をかけるリスクはゼロにはなりません。
でもそのリスクは当然、若くて健康な子ほど低く、高齢で病気を持っている子ほど高くなります。
若い子でもあらかじめ血液検査やX線検査をすることで、体の状態を把握することができるので、さらに麻酔リスクを下げることが可能です

もし、うちの子の避妊手術を考えてあげたいけど不安なことがあって…と思っておられたら、一度何でもないときにウサギさんを連れて病院へ相談に来てみてください。
当院の獣医師、動物看護師がご不安に思っていることを解決するお手伝いをします。
飼い主さんの不安はウサギさんにも伝わりますから、まずはご自身で納得できるよう、何でも聞いてみてくださいね。

ハムスターの写真

ちょっと待って!ウサギさんだけじゃないんです!
実は誰しも子供の頃に一度は飼いたいと思ったことがある(私だけ…?)あのハムスターさんも子宮の病気になります。
ハムスターさんについても、当院に来られた患者さんをご紹介しますね。

症例紹介ー当院に来院されたハムスターさんの一例ー

【飼い主さん】Bさん(仮名)
【ハムスターさん】ショコラちゃん(仮名)

ショコラちゃんは1歳8か月の女の子で、ゴールデンハムスターです。
2日前からおしり周辺が出血しているという理由で他院を受診され、子宮の病気の可能性があるが、手術は出来ないとの事で来院されました。
症状や超音波検査から、子宮にかかわる病気と診断し、当院で手術することになりました。
体重は178.6gととても小さいですが、実施する手術の内容は「子宮卵巣摘出術」といってワンちゃん、猫ちゃん、ウサギさんと同じです。
手術が済み、麻酔からもしっかり覚めてくれたのでふやかしたごはんをあげたところ、食べてくれました。
翌日、ショコラちゃんには飲み薬が処方され、退院となりました。

ハムスターさんも避妊手術した方がいいの?

だったら、ハムスターさんもあらかじめ避妊手術しておいた方がいいの?と考えてしまいますよね。
しかし、ハムスターさんは本当に体が小さく、他の動物に比べて予防的に避妊手術をするのはリスクの方が高いと考えます。
そのため、どうしても病気になってから来院、手術の流れになることが多くなります。
せめて、なるべく病気の早い段階で気づいてあげられるよう、ふだんから観察を心がけてください。

  • ごはんはよく食べてる?
  • 元気はある?
  • 水を飲む量は増えてない?減ってない?
  • 体重は減ってない?
  • 体はきれいに毛づくろいされてる?
  • おしっこは多くない?
  • 血尿はない?
  • 下痢はしてない?

おうちでどれだけ早くハムスターさんの異変に気付けるか、それがハムスターさんがどれだけ長く生きられるかを決めると言っても過言ではありません。
何かおかしい、そう感じたら気軽に病院に来てみてくださいね。
その時は、なるべくハムスターさんが緊張しなくてすむように、普段生活しているケージごと来ていただくのがおすすめです。
寒くないように、バスタオルや毛布などで覆ってあげるともっと良いです。

ウサギさんも、ハムスターさんも、自分の体の悪いところを隠すのが上手な動物です。
それぞれの子たちが病気になる前にやってあげられることは違いますが、可能であれば予防的な手術、無理なら定期的な検査や日々の入念な観察など、その子と長く暮らすためにできることをしてあげましょう。
何か不安なこと、わからないことなどありましたら、お気軽に当院にご相談ください。

動物看護師 立岩美和子

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